
「退職代行を使って今すぐ会社を辞めたいけれど、手元にある制服はどうすればいいの?」
「郵送で返却してもいいのか、それともクリーニングしてから返さないと怒られるのか…」
退職代行サービスの利用を検討している方の中には、このような制服や貸与品の返却に関する悩みを抱えている方が非常に多くいらっしゃいます。会社の人ともう顔を合わせたくないからこそ退職代行を使うわけですから、返却のために出社するのは絶対に避けたいですよね。しかし、正しい手順で返却を行わないと、退職後に会社から連絡が来たり、最悪の場合は損害賠償トラブルに発展したりするリスクもゼロではありません。
この記事では、退職代行を利用する際の制服返却について、郵送の手順、クリーニングの要否、送料の負担区分、梱包時のマナーなどを徹底的に解説します。これを読めば、誰にも会わず、トラブルも起こさず、スムーズに全ての貸与品を返却する方法が明確になります。不安を解消して、新しい一歩を踏み出す準備を整えましょう。
ポイント
- 退職代行利用時の制服返却は郵送で完結できる手順
- クリーニングの要否や洗濯のみで返却する場合の注意点
- 郵送にかかる送料の負担区分とトラブルを防ぐマナー
- 返却を無視した場合のリスクと私物回収の方法
退職代行利用時の制服返却の基本手順
退職代行を利用して退職する場合でも、会社から借りている制服や備品は、法的に返却する義務があります。しかし、出社して手渡しする必要は全くありません。ここでは、顔を合わせずに郵送ですべてを完結させるための具体的な手順や、返却時に迷いがちなポイントについて、一つひとつ丁寧に解説していきます。
制服は会社へ郵送で返却できる

退職代行サービスを利用する最大のメリットは、上司や同僚と顔を合わせることなく、即日で退職の手続きに入れる点にあります。これに伴い、手元にある制服、作業着、エプロンなどの貸与品についても、「郵送」での返却が一般的に認められています。
「郵送だと失礼に当たらないか?」「直接返しに来いと言われないか?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、退職代行業者を通じて退職の意思を伝える際、同時に「貸与品は後日郵送にて返却します」と伝えてもらうことが可能です。会社側としても、すでに退職が決まった社員と無理に顔を合わせてトラブルになるよりは、郵送で速やかに物を返してもらった方が合理的であると判断するケースがほとんどです。
返却の準備を進める際は、制服だけでなく、会社から借りているものを全てリストアップし、漏れがないように一つの箱にまとめるのがポイントです。以下のようなものが手元に残っていないか確認しましょう。
| カテゴリー | 具体的な返却物の例 |
|---|---|
| 制服・衣類 | ジャケット、スカート/ズボン、ベスト、帽子、エプロン、作業靴、安全靴 |
| 身分証明・鍵 | 社員証、入館証(セキュリティカード)、社章、ロッカーの鍵、デスクの鍵 |
| 書類・データ | 健康保険証、名刺、業務マニュアル、顧客リスト、支給されたPCやスマホ |
これらをまとめて梱包し、宅急便やゆうパックなどの「追跡番号(お問い合わせ番号)」がある方法で送ることが重要です。追跡番号があれば、「送ったはずだ」「いや、届いていない」といった水掛け論を防ぐことができ、確実に返却した証拠を残せます。
補足:退職代行業者を利用する場合、業者から会社に対して「本人への直接連絡は控えてください」と通知してもらえますが、返却物に不備があると会社から連絡せざるを得ない状況を作ってしまいます。一度で完璧に返し切ることが、連絡を回避する最大の防御策です。
返却前にクリーニングは必要か

制服を返却する際、非常に多くの人が悩むのが「クリーニングに出してから返す必要があるのか?」という問題です。これに対する回答は、「基本的にはクリーニングに出すのが社会人としてのマナーであり、トラブル回避の最善策」となります。
法的に「退職時に必ずクリーニングしなければならない」という明確な法律があるわけではありません。しかし、就業規則に「被服は洗濯またはクリーニングをして返却すること」と明記されている会社は少なくありません。もし就業規則に違反した状態で返却すると、後からクリーニング代(実費)を請求されたり、そのやり取りのために会社から連絡が来たりするリスクが生じます。
特に、以下のような制服の場合は、クリーニングに出すことを強く推奨します。
- スーツタイプの制服(ジャケット、ベスト、スラックスなど)
- 特殊な素材で自宅洗濯が難しいユニフォーム
- 汚れやシミが目立つ作業着
- 医療用白衣や飲食店の制服など、衛生面が重視されるもの
クリーニングに出した後は、戻ってきたときにかかっているビニールカバーや「クリーニング済み」のタグは、外さずにそのままの状態で梱包してください。これらは「私はちゃんとお金をかけて綺麗にしました」という動かぬ証拠になります。わざわざタグを外してしまうと、一見してクリーニング済みかどうかが分からなくなり、「汚いまま返してきた」と誤解される恐れがあります。
ポイント:退職代行を使う状況では精神的な余裕がないかもしれませんが、数千円のクリーニング代をケチったばかりに、退職後に会社と揉めるのは割に合いません。「手切れ金」のような感覚で、綺麗にして返してしまった方が気持ちよく縁を切れます。
クリーニングせず洗濯で返す場合

「お金がないのでクリーニングには出したくない」「明日には発送して早く終わらせたい」という事情もあるでしょう。すべての制服においてクリーニングが必須かというと、必ずしもそうではありません。Tシャツ、ポロシャツ、簡易的なエプロンなど、日常的に家庭用洗濯機で洗うことが想定されている衣類であれば、自宅での洗濯(ホームクリーニング)でも許容されるケースが多いです。
ただし、自宅で洗濯して返却する場合は、以下の点に細心の注意を払う必要があります。
1. 汚れとニオイを徹底的に落とす
見た目の汚れはもちろんですが、意外と盲点なのが「ニオイ」です。汗のニオイはもちろん、柔軟剤の強すぎる香りや、部屋干しの生乾き臭、タバコやペットのニオイが付着していないか確認しましょう。会社側が受け取った瞬間に「臭い」と感じれば、それだけでトラブルの火種になりかねません。
2. アイロンがけでシワを伸ばす
洗濯して乾かしたものを、シワクチャのままダンボールに詰め込むのはNGです。ポロシャツやエプロンであっても、必ずアイロンをかけ、丁寧にたたんでから梱包しましょう。この一手間があるだけで「誠意を持って返却した」という印象を与えることができます。
3. ペットの毛や髪の毛の混入を防ぐ
特にペットを飼っている方は要注意です。黒っぽい制服に動物の毛がついていると非常に目立ちますし、不衛生な印象を与えます。コロコロ(粘着ローラー)を使って、繊維の奥に入り込んだホコリや毛を丁寧に取り除いてください。
注意:もし制服がひどく汚れていたり、破損していたりする場合は、正直に退職代行業者に相談し、業者経由で会社に伝えてもらうのが無難です。黙って送りつけると、後から損害賠償の話になりかねません。
郵送時の送料は自己負担か着払いか

郵送で返却する際、送料を「元払い(自分持ち)」にするか、「着払い(会社持ち)」にするかは、非常に重要な問題です。結論から申し上げますと、原則として「元払い(発払い)」で送るのがビジネスマナーであり、安全な選択です。
なぜなら、退職に伴う貸与品の返却義務は労働者側にあり、それを「持参」ではなく「郵送」という手段で行うのは、あくまで労働者側の都合(出社したくないから)であると解釈されることが多いからです。民法の原則的にも、特約がない限り債務の履行(=物の返却)にかかる費用は債務者(=借りている側)が負担するのが一般的です。
もし、相談なしに勝手に「着払い」で送りつけた場合、以下のようなリスクが考えられます。
- 会社が受取拒否をし、荷物が自分の家に戻ってくる(往復の送料を負担することになる)。
- 受け取りはされたものの、後日、給与から送料分を天引きされる。
- 「非常識だ」と怒りを買い、退職書類(離職票など)の手続きを後回しにされる嫌がらせを受ける。
ただし、例外も存在します。退職代行業者を通じて会社と交渉し、「着払いで送っていいですよ」という許可を明確に得た場合や、会社側から「着払いで返送してください」という指示があった場合は、着払いで送っても問題ありません。また、ブラック企業によるパワハラ等が原因で退職せざるを得ない場合など、交渉次第では会社負担にできるケースもありますが、基本的には「千円程度の送料でスムーズに縁が切れるなら安いもの」と考え、元払いで送ることを強くおすすめします。
梱包に添え状や手紙は入れるべきか

制服をダンボールや紙袋に入れて送る際、ただ制服だけを詰め込むのは少々乱暴な印象を与えます。必須ではありませんが、簡単な「添え状(送付状)」を一枚入れておくだけで、事務手続きが格段にスムーズになり、相手に与える心証も良くなります。
ここで言う「添え状」とは、お詫びの手紙や恨み言を書くものではありません。あくまで事務的に「誰が」「何を」「どういう目的で」送ったのかを明らかにするための書類です。退職代行を使っている以上、感情的なメッセージ(謝罪や感謝、あるいは不満)を書く必要は一切ありませんし、むしろ書かない方が良いでしょう。余計なことを書くと、それがきっかけで会社側からの感情的な反応を引き出してしまう可能性があるからです。
添え状は、手書きである必要はなく、PCやスマホで作成してプリントアウトしたもので構いません。手書きの場合は、白紙の便箋やコピー用紙に丁寧に書きましょう。
【そのまま使える!シンプルな添え状のテンプレート】
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇〇〇
人事部 御中(または 〇〇店 店長様)
氏名:〇〇 〇〇
退職に伴う貸与品返却の件
拝啓
この度、退職に伴い、会社より貸与されておりました以下の物品を返却いたします。
ご査収のほど、よろしくお願い申し上げます。
【返却物一覧】
- 制服一式(上着、ズボン、ベスト) ※クリーニング済
- 健康保険被保険者証
- 社員証
- ロッカーの鍵
以上
このように、中身が何であるかを箇条書きにしておくと、会社側も検品作業がしやすくなり、「保険証が入っていないぞ!」といった勘違いによる連絡トラブルを防ぐ効果もあります。
伝票の宛名や宛先を確認する方法

荷物を送る際の「宛先」も、間違えると返送されたり、社内で行方不明になったりする原因になります。基本的には、「自分が所属していた事業所(店舗や支店)」または「本社の人事部」宛に送ります。
退職代行を利用している場合は、担当者を通じて「返却物はどこに送ればよいか?」「宛名は誰にすればよいか?」を必ず確認してもらいましょう。これが最も確実な方法です。もし確認が取れない、あるいは確認する時間がない場合は、以下のように記載するのが無難です。
| 送り先 | 宛名の書き方例 |
|---|---|
| 店舗・支店の場合 | 〇〇株式会社 〇〇店 店長 〇〇様(または 店長様) |
| 本社の場合 | 〇〇株式会社 本社 人事部 御中(または 総務部 御中) |
伝票の「品名(内容品)」欄には、「衣類」とだけ書くのではなく、「退職時返却物(制服、保険証等)」と具体的に記載しておくと、受け取った人がすぐに中身を理解でき、開封や処理が優先されやすくなります。
また、コンビニや郵便局で発送した後に受け取る「控え(お客様控え)」は、会社側が「届いた」と認識し、退職手続きが完全に完了するまでは絶対に捨てずに保管しておいてください。万が一の配送事故や紛失トラブルの際、この控えが唯一の証拠となります。
退職代行を使う際の制服返却の注意点
前半では「正しい返し方」について解説しましたが、ここからは視点を変えて、「もし適切に返さなかったらどうなるのか」というリスク面や、会社に残してきてしまった「私物」の扱いについて深掘りしていきます。退職代行で関係を断つからといって、すべてを投げ出していいわけではありません。
制服返却を無視した場合のリスク

「会社が嫌いで辞めたんだから、制服なんて返したくない」「面倒だからこのまま捨ててしまおう」…そんな風に考えてしまう気持ちも分かりますが、制服の返却を無視し続けることは、法的に見て非常に危険な行為です。
制服や保険証、社員証などは、あくまで会社から「借りているもの」であり、所有権は会社にあります。これを返さないということは、他人の物を勝手に自分のものにする行為、つまり刑法上の「横領罪」に該当する可能性があります。もちろん、制服一着でいきなり警察が動くことは稀ですが、理論上は犯罪になり得る行為であることを認識しておかなければなりません。
より現実的なリスクとしては、民事上の「損害賠償請求」が挙げられます。会社側は、「制服が返却されないことで新しい制服を購入しなければならなくなった」として、その実費を請求することができます。また、就業規則に「退職時に貸与品を返却しない場合、給与からその相当額を控除する」といった規定がある場合、最後の給料から数万円が引かれてしまう可能性もあります(ただし、賃金の全額払いの原則があるため、本来は本人の同意なく天引きすることは違法性が高いですが、実務上トラブルになりやすい点です)。
さらに、事務的な嫌がらせを受けるリスクもあります。制服が返却されるまで、失業保険の申請に必要な「離職票」や、次の職場での加入に必要な「資格喪失証明書」の発行手続きをストップされるケースです。自分のこれからの生活を守るためにも、返却義務だけは速やかに果たし、会社につけ入る隙を与えないことが重要です。
会社に置いた私物を回収する方法

退職代行を使って急に辞める場合、会社のロッカーやデスクに私物(マグカップ、クッション、ひざ掛け、文房具、履き替え用の靴など)を残したままになってしまうことがよくあります。これらは自分の財産ですから、当然回収する権利があります。
私物を回収したい場合は、退職代行業者を通じて「私物を自宅へ郵送してほしい」と会社に伝えてもらいましょう。自分で会社に取りに行く必要はありません。この際、以下のポイントを押さえておくとスムーズです。
私物回収のポイント
- 何がどこにあるか具体的に伝える:「ロッカーの中身全部」だけでなく、「ロッカーの上段にある青いポーチと、デスクの2段目にある私物の電卓」のように具体的に伝えると、会社側も作業しやすくなります。
- 送料は「着払い」で了承する:私物を送り返してもらう場合の送料は、「着払い(自分負担)」とするのが通例です。会社に梱包や発送の手間をかけさせるわけですから、送料くらいはこちらが負担するという姿勢を見せることで、会社側も応じてくれやすくなります。
- 不要なものは廃棄を依頼する:もし「もう要らない」と思う私物であれば、「ロッカーの中身は全て会社で処分してください」と伝えることも可能です。ただし、処分費用がかかるような大きなものの場合は断られることもあります。
返却はいつまでに行うべきか

制服や保険証などの貸与品は、いつまでに返せばよいのでしょうか?法律で厳密な日数が決まっているわけではありませんが、一般的には退職日から1週間以内、遅くとも2週間以内には会社に届くように手配するのが目安です。
退職代行を実行した当日は、精神的にも混乱しており、すぐに動けないかもしれません。しかし、返却が遅れれば遅れるほど、会社側は「本当に返す気があるのか?」「何か持ち逃げされたのではないか?」と疑心暗鬼になり、本人や実家に連絡をしてくるリスクが高まります。
理想的なスケジュールは以下の通りです。
- 退職代行実行日(退職日):業者から会社へ連絡。同時に、自宅で返却物の梱包準備を開始。
- 翌日〜3日以内:クリーニングが必要なら出し、仕上がり次第すぐに発送。洗濯で済むなら翌日には発送。
- 1週間以内:会社に荷物が到着。完了。
「鉄は熱いうちに打て」ではありませんが、退職の手続きという面倒なタスクは、勢いがあるうちに全て終わらせてしまうのが一番です。時間が経つほど腰が重くなり、ダンボールを見るのも嫌になってしまいます。新しい生活をスッキリとした気持ちでスタートさせるためにも、早期返却を心がけましょう。
退職代行で制服返却も解決しよう

ここまで解説してきた通り、退職時の制服返却には、クリーニングや郵送方法、添え状の有無など、細かいマナーやルールが存在します。しかし、これらを全て自分一人で抱え込み、会社と直接やり取りをする必要はありません。
退職代行サービスを利用していれば、「制服はどうやって返せばいいか」「クリーニングは必須か」「私物は送ってもらえるか」といった疑問や要望を、全て代行業者を通じて会社に確認・交渉することができます。プロの業者を介することで、感情的な対立を避け、事務的に淡々と手続きを進められるのが最大の強みです。
もし今、「会社を辞めたいけど、制服を返すときに何か言われるのが怖い」「返却方法がわからなくて動き出せない」と悩んでいるなら、まずは退職代行業者に相談してみることをおすすめします。彼らは退職のプロであり、制服返却に関するトラブル回避のノウハウも豊富に持っています。面倒な手続きや会社との連絡は全て任せて、あなたは自分自身の心と体を休めることに専念しましょう。制服を返してしまえば、もう会社との繋がりは完全に断たれます。自由な明日は、すぐそこまで来ています。